コラム

お先に失礼します

当社ではお昼明けに、工場から届く印刷物の見本などを、営業の各課が当番制で営業担当者へ配布している。しかし、昼までに届かないものも当然ある。それらを皆が帰った夜に、率先して担当者のデスクに配布する人がいる。
私は「今やらなくてもいいのでは…?」と心の中で呟きつつ、言葉にはせず一旦考えてみる。その人の真意はわからないが、誰かにアピールするためにやっているわけではなく、「気が付いたから」「ついでに」など、あくまで“個人的な動機”で行動しているのではないかと。

ある日気が付くと、営業フロアにはその人と私だけになっていた。なぜか少し申し訳なさそうに「えーあーお先に失礼します」と声を掛けてくれて、その人は帰って行った。
私は今日も何とか乗り切ったと、戸締りして電気を消しエレベーターホールに向かうと、営業フロアがある4Fに、今日もエレベーターが停まっていた。これまではあまり意識していなかったが、その人が降りる際に4Fボタンを押してくれたのだ。
その人は今回もおそらく”個人的な動機”で行動しただけだと思うが、私はあたたかな気持ちになって、少しだけやさしい気持ちで帰路に就くことができた。

営業部 S

TOP